子どもを信じるってどういう事?

我が家の脳性麻痺オシャンティー男子18歳。

来年の卒業を控え、人生きっての勝負に出た。

 

 

大阪から京都まで、介助者なしの一人旅に出かけたのだ。

 

話す事もままならない。

車椅子の自操なんてとんでもない。

 

そんな彼が京都までどうやって一人で行って、帰ってくるのか。

 

答えはこう。

「行き先を紙に書いて、読んだ人に連れて行ってもらう!」

 

 


しかし、さすがに本当の一人きりだと安全面で心配が残る。

そこで、前回私の講演会でお会いした素敵な大学生、水口さんに相談。

 

「こんな企画うちの息子がやろうとしてるんですけど、遠くから見守りと、ちょっとビデオ撮影とか企画を面白がってくれる方でお願い出来る学生さん、いらっしゃいませんかね?」

 

すると

「あ、それ僕やって良いですか?」という神的一言を頂き、決定。

 

10月某日、初めての彼と水口さん。

そして企画応援隊長の川口さんと大阪梅田で挨拶&打合せ。

 

夜の夜景と、オシャンティーな大人空間での打ち合わせに彼は終始感動の様子だ。


その後、ひょんなことからとあるTV局さんから撮影同行も入っていただける事になり。

「この子、ほんともってるわ」なんてしみじみ。。

旅の下準備も余念なく。

 

当日のルートはこうだ。

 

『阪神姫島駅発→阪神梅田駅到着→徒歩→阪急梅田駅到着→阪急嵐山駅→竹林観光→ランチ→お土産購入→阪急嵐山駅→阪急梅田駅→徒歩→阪神梅田駅→姫島駅到着』

 

 

このルートを、

首から下げた紙に「○○まで一緒に行きませんか?(しませんか?)」と書いておく。

 

海外の方もいらっしゃるかも、と、英語訳も書いた。

 

車椅子の操作が初めての方にわかるように、ブレーキ操作方法も明記。

 

夜になるかもしれないので、暗くなったら自動で点くライトも胸元に装着。

 

多分これで行けるはず(笑)

 

 

 

 

 

 

11月7日火曜日、当日。

「あー、楽しみやー」という彼は能天気なのか、なんなのか。

心配のあまり怪訝な顔をする祖父母を横に、満面の笑みだ。

 

 

 

私の仕事の都合で、前日祖父母宅に宿泊、出発した彼は

祖父母宅最寄り駅「阪神本線 姫島駅」から出発。

 

 

駅で同行してくださる水口さんと9:30合流。

そして彼と別れた。

 

 

自宅で在宅ワークだった私は、ただ待つのみ。

水口さんから初めて連絡が入ったのは彼と別れた1時間30分後の11時43分。

 

「梅田まで来ています!」

というメッセージと、女性に車椅子を押してもらっている彼の写真だった。

次の写真は、阪急電車に乗る彼の写真と

「ずっとニヤついています。」というコメント。

 

 

次の写真は13:13.

嵐山駅に着き、一人の女性と進む彼だ。

旅の順調さにちょっと驚いた。

 

竹林に向かっているらしい。

彼の表情は少し緊張の面持ちなことを思うと、

女性の顔は見えなかったが、おそらく美人なんだろうと推測する。

 

 

13:35

畠山さんやばいです」という水口さんのメッセージにぎょっとしたのもつかの間。

 

 

「いい意味です」

という言葉と、3人の方に車椅子を押していただいている写真が送られてきた。

世の中、なんだかいい感じに回っているんだなあ…

 

 

 

なんて気を抜きかけたその時、それはやってきた。

そう、誰も声をかけてくれない長い長い時間が。


「僕とお昼ご飯を食べませんか?」

 

 

彼が胸元に掲げている言葉は、14:00を迎えた嵐山の雑踏にぽつんとあった。

 

幾人もの人が彼の前を通り過ぎてゆく。

 

15:00

彼は変わらずそこにいた。

 

 

16:00

「僕とお昼ご飯を食べませんか?」

 

その言葉は彼と共に、町へかき消されように見えた。

 

 

16:20

 

待つってこんなに長いんだ。

 

今日はもう帰ってこられないかもしれない。

 

彼を思ったとき、喉元に苦い物がこみあげてくる。

何を思っているんだろう。

どう感じているんだろう。

 

でも、信じるって決めたんだ。

 

私はここでもう待つしかない。

 

覚悟したその時、水口さんからメッセージが届く。

 

「知らない人同士がこうして助け合ってくれています。さあ、ついに次のミッションです!

 

きたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

女性5人が胸元の紙をめくり、話している。

「ランチはもう食べてんけど、ソフトクリーム食べる?」

「お土産買いに行こ!」

 

脱げた彼の靴も、みんなであーだこーだと履かせてくれている。

 

私は心からほっとしたのだった。


18:22

帰りは、最後に出会った女性お二人と、最終ゴールの姫島駅まで帰ってきた。

女性は路線も違うのに、だ。

 

彼の顔は、本当にいい顔をしていた。

送ってきてくださった女性のお一人は泣いていた。

 

私はそんな女性や、彼の笑顔を見た時、この旅を経て彼だけではなく、

多くの人の心が動いたのかもしれないと感じた。

 

お手伝いしてくださった方はもちろんだが、実際に行動には移せなかったけれど、何か感じたり、考えたりするきっかけになった。

そんな方もいたかもしれない。

 

彼にしかできない事。

それは「一人で京都行きたいねん!」からはじまった冒険だった。

 

 

出来ない事なんてどうでもいい。「何がしたいか」が大事やろ。

 

私と彼の合言葉。

こんなんしたら迷惑かな、はついつい先に頭に浮かぶ。

 

だけど、迷惑かどうかは、相手に決めてもらってもいいんじゃないか、とも思う。

 

迷惑をかけるからやめる。よりも、

やると決めてから、じゃあどうしたら『迷惑』だとかを回避できるのか。

 

そんな順番で考えるのも悪くはない。

 

『子どもを守る』って何かが起きないように身体を守る事でも、

「そっちじゃなくてこっちがいいよ」と道を用意しておくことじゃない。

 

『子どもを守る』ってことは、子どもの気持ちを守る事だと私は思う。

 

勇気を出したり、チャレンジしたり、一歩前に踏み出そうとするその心を。

 

踏み出した結果、折れそうになったり、自分をほめたいと思っているその心を。

 

そんな子ども達の心を守る。それが私流の『守る』だ。

 

 

 

 

みんなと一緒に写真を撮る彼の横顔は、自分をちゃんと生きてゆこうとしているように見えた。

 

 

 

親なんて結局、

「信じる事」→「待つ事」しかできないのかもしれない。

 

 

 

 

それにしても、信じるって疲れるなあ・・・

 

そんなことをしみじみおもった、長い長い秋の日。

見上げた空は、とても綺麗な月が輝いていた。

 

 

 

 


講演会のお知らせ

【君の未来はその手の中に】講演会

■2017年12月4日月曜日 11:00~

■場所 フレンチレストラン『ルクロ・ド・マリアージュ』(大阪天満橋駅徒歩5分)

■参加費 10,000円(ランチ付き)

■定員数 60名

■お申込み・お問い合わせ→下記チラシに記載

 

前回の4月の講演会から多くのアンコールのお声を頂いてきました。

そんなお声にお応えさせていただきたい!

『キミノテ』プロジェクトメンバー(障がい児福祉に命を燃やすルクログループオーナー兼フレンチシェフ 黒岩功氏・混合保育の愛の異端児 瀧幸子氏・思いを繋げるプロフェッショナル 内田明子氏)と何度もミーティングを重ねながら、

この度満を持して12月4日第二回【君の未来はその手の中に】講演会をお届けさせていただきます!

 

 

障がいを持った子どもたちと関わる全ての皆様はもちろん、今何らかの迷いの中にいらっしゃる方、何か始めたいけど踏ん切りがつかない方、子育てやご家庭内でお悩みを抱えられていらっしゃる方、社内でのご自身の役割を見つけたい方。

 

ピンときた!そんな皆様へお届けしたい講演会です(^^)

 

 

療育に携わる者として。障がい児と共に生きる母として。

そして一人の人として、今回の#リョータビにおいての母としての気付き等

様々な角度から『子どもたちの未来』と『可能性』について

『知る』そして『気付く』をキーワードに、心を込めてお話させていただきます!

 

皆様お誘いあわせの上、ぜひお越しくださいね(^^)