脳性麻痺オシャンティー男子との暮らしで思うコト/必殺ピンポン

我が家の脳性麻痺オシャンティー男子17歳。

 

高校生活の目的は

「勉強はしねえ。おら友達を作りに行くんだ」

 

なんて豪語しておきながら、クラスメイトと仲良くはしているものの

いまだに深い友達は一人もいない。

 

『勉強はしない』『友達は出来ない』ときたら、

 

 

 

お前さんは何しに学校行ってるんだ!

交通費返せ!

ママの時間を返せ!

 

 

 

とまあ、私にもどやされる訳である。

 

 

しかし彼が友達が出来にくいの今更ながら何故なのか、もう一度考えてみた。

 

友達ができるきっかけは、質問ではないのか?

 

「ねえ、ちょっといいかな?次の体育って体育館だっけ?」

「あ!そのバック素敵!どこで買ったの?」

 

そうだ。

 

彼は話しかけられたことに関しては、彼なりに答えようとするのだが

『話しかける』というコトに関してはまるで初心者ではあるまいか?

 

発語が明瞭ではなく、更に筋緊張が強く、言葉の引き出しも少ない彼にとって

会話は決して安易ではない。

 

だからこそコミュニケーションにスイッチや、視線入力やなにやら試してきたのだが、

いや待てと。

 

まずは『話しかける』というハードル、忘れてるやんか!

と。

 

よしきた。

ここクリアしていこ!

 

 

 

 

…となればなんだ。

 

意中の人に話しかけたい。質問したいとなればどうする?

 

→人を呼ぶ

 

そうだ。

だれか人を呼んで自分が話したい事があるんだということに気が付いてもらわないといけない。

 

どうやって呼ぶ?

 

「おーい、だれかー」って呼ぶ?

 

無理だ、ちょっと悲しすぎる。

 

そこで閃いたのがこれだ。

 

 

Amazonさんで894円の早押しアンサー。

 

押せば空気を引き裂く『ぴんぽーん!』の音と同時に〇が勢いよく『ぱかっ!』と立ち上がる。

 

これならみんな気が付くはずだ。

この強制感は無視する事のほうがある意味、強い意志を必要とする。

必ずや誰かを彼のもとに誘うはずである。

 

 

 

 

 

うしし


早速購入。

翌日には到着。

 

親子2人ご機嫌で早押しアンサーを学校へ持ち込んだ。

 

 

「これ、使ってください!」

 

担任の先生、そして副担の先生の手元に早押しアンサーを手渡す。

 

「これは…」

 

と、戸惑いながらしばらく眺めた後、徐に赤いボタンを先生が押すと

 

 

 

『ぴんぽーん!』

 

 

朝賑わう教室をチープなピンポン音が切り裂いた。

 

 

・・・

 

 

 

教室はまるで俗にいう『幽霊が通った』やつになった。

 

 

 

「・・とですね、この様に友達に気が付いてもらえると言うわけなんです。」

 

いかにも「そうだ」という顔でピンポン効果について説明する。

 

 

「なるほど。よくわかりました。一度色々と試してみましょう」

 

 

 

 

先生の真剣なまなざしに深く頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


聞けばその後、クラスメイトと早押しアンサーの固定位置や対処法について話し合ってくださったという。

 

今はテスト期間。

テストが終わればすぐに運動会だ。

 

その後、さてこの早押しアンサーが彼と、彼を取り巻く環境にどんな変化を起こすのか、それとも起こさないのか。

楽しみにしている。