
我が家の脳性麻痺オシャンティー男子には、歳の10歳離れた妹がいる。
我が家のアイドルだ。
なぜ10歳離れたのか。
よく聞かれるのだが、理由はいくつかある。
初めは『彼一人に愛情を注いであげよう。』
そう思っていた。
だけど単純に、兄弟がいたらどんなんかな?
彼にとってどうなんだろう?
本当に一人に愛情?それがいいのか?
夫や、じいじやばあばにとってはどうなんだろう?
そんな気持ちと。
そして私の
『子どもと手を繋いで、一度でいいから歩いてみたいなー』
(車椅子だと中心の子どもが両手で引っ張られてる感じになるのね(笑))
そんな気持ちと。
『だけどもしかしたら、二人目も障害をもって生まれてくるかもしれないな。』
そう考えた時
『10歳離れたら、まぁ、二人目も障害があっても何とかなるかね。
だったらじいじやばあばが元気で、まだ当てにできる今でしょ!』
となったわけだ。
10年越しに生まれた彼女は、計画的帝王切開で出産。
泣きながら、両手の親指を口に突っ込んだ『W指しゃぶり状態』で生まれてきた彼女を見て
彼女の生命力を確信した、あの日から7年。
彼女は今日もよく食べ、よく笑い、よく眠る。
そんな彼女が先日私にこう尋ねてきた。
『ねえ、ママの大事なものって、やっぱりつーちゃん?(彼女のニックネーム)』
ちょうど朝家を出る、一日の中で最も忙しいタイミング。
「ああ、そうやで」
私は半ば投げやりに、そう答えた。
しかしその後、思い直し、こう聞き返した。
「つーちゃんは?つーちゃんは何が大事なん?」
すると彼女はこう答えた。
「りょうか兄にと、それから、自分の気持ち。」

障害を持つ彼にとって、私たちがいなくなった後、兄妹がいるということはきっと心強いはずだ。
私たち両親に何かあった時は助け合って生きてくれたら、と思う。
でもそれ以上に、彼や彼女にはそれぞれの人生を生きてほしい。
そうずっと思っていた。
無意識に犠牲になったり、お互いがいる事で何かを諦めたり、我慢したりしてほしくない。
なぜならそれは、お互いにとって不幸だからだ。
誰もそれを望んではいない。
いつも二人に伝えてきた。
「君達が世界で一番大切だ。
君たちは君たちにしかできないことがある。
だから、自分の気持ちに嘘をついてはいけないよ。
そんなことをしてしまうと、君たちは君達でなくなってしまうのだから。
君たちが、君達でいてくれることが、ママは何よりも嬉しいのだから。」
「りょうか兄にと、自分の気持ち」
その言葉に、思わず彼女を抱きしめた。
私の腕の中で
くふふ!
小さく笑う彼女は、とても暖かくて、食パンの匂いがした。
