■プログラムへの想い

■本当の障害って何なの?

19歳で妊娠、出産。そして生まれた子は1722gの小さな小さな男の子。

保育器に入る彼を見て、幼い私はただ彼を黙って眺めていました。

 

そして彼が0歳8か月の時こう告げられました。

 

『お子さんは脳性麻痺ですね』

 

いつまでたっても首が座らない。

ミルクを1時間かけて20㏄やっと飲ませて、げっぷと同時にほとんど吐く。

抱いても、寝かせてもすっと泣き続ける,私の小さな赤ちゃん。

 

 

 

なぜそうなのか理由がわからない心配と、不安と、悲しさと、苦しさと、

毎晩の夜泣きからの体力の消耗とで、すべてが壊れてしまいそうだった私は

 

『お子さんは脳性麻痺』というドクターの言葉に

 

『ふーん』

 

脳性麻痺がなんだかわからないけれど、彼の育てにくさに原因があった事に、ほっとした事を今でも覚えています。

 

彼は小学4年生ごろまでは本当に泣き虫で

どこに行っても、誰と会っても、何をしてもすぐに涙が溢れてきます。

 

心悩ませた私は、当時の先生に相談しました。

 

そして一言

『きっと自信がないのでしょうね』

 

自信がない。

 

自分の力で何かを成し遂げた事が一度もないから

自信がない。

 

やった!

できた!

 

そんな経験が、無かった彼。

 

話せない、動けない、そんな彼に私が出来ることって何だろう?

 

悩みながら気が付けば彼は中学生になっていました。

 

 

 

そんな彼が14歳(中学2年生)の時、初めて気が付いたことがあったのです。

 

『ママ、傾けるって何?』

 

彼は14歳にして様々な事柄がすっぽり抜け落ちていたのです。

 

 

理由の一つはそう圧倒的な経験不足』でした。

 

 

移動・食事・排泄、全介助。

筋緊張とアテトーゼとの混合型の彼は、言葉を上手く操れません。

 

 

彼と10歳離れた長女の成長を見て初めて私も

「子供ってこんなに早くから色々な事考えたり、不思議に感じたりしているんだ。」

と知ったのです。

 

 

しかし発語に障害がある彼は

『なんでかな?』

『これは何かな?』

『それはどういう意味なの?』

 

と【??】は浮かんでも、

その疑問を訴えられず、そして私も気づかず、数えきれない沢山のことを取りこぼしたまま

14歳になってしまいました。

 

 

 

そこで始めたのが

『一つ一つの経験を積み重ねる』事。

そしてその

『経験と言葉を一致させてゆく』事。

 

でした。

 

 

 

障害があるからできないんじゃない。

障害があるからわからないんじゃない。

障害があるから知らないんじゃない。

 

 

知的に、身体に、精神に障害があることによって

体験できないことがある=『経験の不足』こそが障害の根底にある。

 

 

 

子供たち一人一人の【好き!】と【苦手】に寄り添いながら、

一つ一つの『できた!』『わかる!』『知ってる!』を積み重ねてゆく。

 

 

これこそが子供たちの自信を育み、生きる力になり、明日の喜びになる。

 

未来を信じ、未来を夢見る。

そんな力の芽を育くむはずです。

 

 

私はいつも長男にこう話しています。

 

「障害があることをできない言い訳になんてしないで。

 

 だって君はなんにだってチャレンジできるんだから。君が望みさえすれば。」

 

 

例え障害があろうとも、自分の未来を信じられる子が一人でも多く育って欲しい。

 

今日もそんな思いでワークをお届けしています